キミに幸せの花束を
それは瑞希にさえ秘密にしていたこと。


私は小さく震える声で言った。


「事故じゃ、ないんです……」


「恋莉どういうことだ?」


皆、私の言葉に驚いた顔をしている。


類がずっと泣き続ける私を宥めながら聞いた。


「殺されたんです………佐伯 悠斗に」


「それは本当か?!…それにどうして恋莉ちゃんがそんなことを知っているんだ?」


すごい剣幕で尋ねる類のお父さん。


瑞希はすごくショックを受けたような顔をしていて、やっぱりあの時は話さなくて良かったと思った。


「…それも含めて全てお話します」


緊迫した空気の中、私は震える声で話し始めた。


──────


私のお父さん、森田 信也-モリタ シンヤ-は神竜の初代副総長だった。


お父さんは引退した後に佐伯組にスカウトされて入ったけど…脅されて入ったようなものだったから悪い噂を知った時、直ぐに辞めようとしてた。


そんな時、付き合っていたお母さんのお腹に私ができたからお父さんは私とお母さんを守るために佐伯組を無理やり辞めた。


…でもそれが間違いだった。


佐伯組を辞めることは許されない、辞めることは裏切りに値する行為、それを行った者は家族全員を皆殺しにされる。


それが佐伯組の暗黙の了解で皆辞めたくても辞められなかった。


そして2人は結婚して、お父さんはお母さんの名字を名乗って佐伯組から遠く離れたところへ引越した。


平和で、幸せな毎日だった。


優しいお母さんとお父さんがいて、可愛い弟ができて…毎日が幸せだった。


あの日までは。


3年前の8月12日、いつも通り家族で楽しく団欒している時だった。


その日は瑞希がお友達の家に遊びに行っていて3人で過ごしていた。


ーピンポーン


インターホンが鳴って宅急便かと思った私は確認もせず開けてしまった。





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