キミに幸せの花束を
「はーい、どちら様です…」


私は最後まで言えなかった。


目の前に突きつけられた物に恐怖で頭が支配されて動けなかった。


ドアを開けると佐伯 悠斗が笑いながら銃を持って立っていた。


「さようなら」


バァンッ


耳をつんざく様な銃声が聞こえた後、私の視界は赤く染まった。


お父さんは私に覆いかぶさって真っ赤な血を流しながら倒れていた。


「おと…さん?」


カチャ…と音がする方を見ると男がまた私に向けて銃を構えた。


バァンッ


今度こそ死んでしまう、そう思った時にまたお母さんが私を庇った。


「おかあ、さん…?」


「ごめんな…恋莉。幸せに、い、きて…」


「ごめんね恋莉…瑞希をよろ、し、くね…」


そう言った2人の手はどんどん温もりを失っていって、動かなくなってしまった。


「いや、いやぁ……死なないでっ」


「幸せにかぁ…それは無理だね。裏切り者は皆殺しだからね」


皆殺し?


「それじゃあ、あなたは私の弟も殺すの…?」


「そうだね〜それが決まりだからね」


「そんな……」


「だけど君が僕の言うことを全て聞くなら、弟は見逃してあげてもいいよ?」


瑞希が生きていてくれるなら、私はどうなってもいい。


私が瑞希を守らなきゃ。


「分かりました。あなたの言うこと全て聞きます…だから瑞希のことを見逃してください!」


「うん、契約成立ね。守らなかったら即殺すからよろしくね」


こうして私は悠斗さんの彼女になった。


私たちの繋がりは愛なんて温かいものじゃなく、契約という冷たく私を縛りつける鎖のようなもの。


真実を言ってはならないというのも契約の1つで私は事故死ではないことさえも何も言えなかった。




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