キミに幸せの花束を
それでもいつか瑞希が笑って過ごせるならそれでいいと思って私は嘘をついた。


そして私は両親の葬式の次の日、何も知らない瑞希を1人残して家を出た。


──────


話が一通り終わって顔を上げると瑞希と周くんは泣いていた。


「姉ちゃんごめん……俺なんも知らずに自分だけ気楽に生きて、姉ちゃんのことばっかり責めて最低だなんて言って本当にごめん…」


泣きじゃくる瑞希をそっと抱きしめて背中をさすった。


「瑞希は悪くないの…ずっと嘘ついててごめんね?私は自分がどうなったとしても瑞希を守りたかった。笑ってて欲しかったの…」


「姉ちゃんありがとう…ずっと俺を守ってくれて。今度は俺が姉ちゃんのこと守るから」


そう言って笑った瑞希は私の記憶にある3年前の小さくて泣き虫な瑞希じゃなくなっていた。


「僕らもれーちゃんのこと絶対守るから!」


「俺らのお姫様を傷つけた奴は許さないよ」


「恋莉さんは僕らの大切な仲間ですからね」


皆の言葉が嬉しくて、また視界が涙でぼやける。


暴走族の人たちって乱暴で怖い人ばかりだと思ってた。


だけどここの人たちは優しくて、温かくて…いつの間にか大切な人になっていた。


…お父さんもこの温かい場所が大好きだったんだね。


"契約"を破ってしまったからにはもう後戻りは出来ない。


悠斗さんに歯向かうことはすごく怖くて今すぐ逃げ出してしまいたくなるけど、皆がいるからきっと大丈夫。


そう思ってはいても胸の中を占める恐怖は消えてくれなくて、手の震えが治まらない。


不意に触れた温もりが私の手を包んだ。


この温もりを、私は知ってる。


「絶対に守ってやるよ。…だから俺たちを信じろ」


「ありがとうっ…」


気がつけば笑っていた。


久しぶりに、本当の笑顔で。


あなたの言葉は魔法みたいに私に勇気をくれる。


だから私も強くなれる気がするの。


お父さんが大切だったこの場所を守るために私も戦うよ。


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