麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない


「ハーランツ? あいつなら、有休を取っているはずだ」


 オルデン団長を訪ねると、彼は仕事の片手間に素早く答えた。

 ダークブラウンを基調とした机や本棚が並ぶ執務室で、忙しそうに万年筆を滑らせる音が響く。


「めったに私用で休暇を取らないから、外の女にでも会いに行ってるんじゃないか」

「えっ!」


 予想外の発言に声が出てしまった。

 あれだけ容姿が整っているうえに包容力があって頼れる性格なら、世の女性は放っておかないだろう。

 頭では納得がいくけれど、突然の展開に動揺する。


「デートという意味ですか? なぜ分かったんです?」

「毎年この日になると出かけるし、おそらく記念日かなにかだろ。花屋でブーケを予約していたようだしな」


 ハーランツさんの恋人の存在に全く気が付かなかった。

 相手は私をかくまっている事情を知っているのだろうか。同じ部屋で過ごしているのはいい気がしないはずだ。

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