麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
でも、彼女を気づかう以前に、ショックを受けている自分がいる。
私、いつのまにか欲張りになっていたみたい。恋人でもないのに、彼の一番近くにいる女性が自分だと勘違いをしていた。
なんだか、胸がモヤモヤする。
勝手に想像を膨らませていると、オルデン団長は背もたれに寄りかかって口を開いた。
「なんだ? 飼い主を取られて妬いているのか?」
「ち、違います。団長まで僕を子猫扱いするんですね」
「はっ、冗談だ」
誰から見ても、甲斐甲斐しく世話をする飼い主と子猫の関係だと思われているのだろうか。
本当は、お互い王と騎士団をあざむく反逆者だというのに。
すっかり定着してしまったほのぼのイメージと実際はずいぶんとかけ離れていることを口にできずにいる間、仕事をさばく彼の手は止まらない。
やがて、こちらへは一切視線を向けない彼の口から、無視できない情報が飛び出した。
「たしか、ハーランツは十四時の列車に乗ると言っていたな」