麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
さすがに竜の姿では人の言葉は話せないようだけど、たまに喉を鳴らしてくれる。話しかけているんだろう。
なんて言っているのかわからないが、「怖くないか?」とか「寒くないか?」とか、こちらを気づかってくれているのは伝わった。
「すごい、もうヨルゴード国の城が見えますね」
前方に、見慣れた荘厳な城が現れた。
ゆっくりと下降したハーランツさんは、人目を避けるため、王都から少し離れた森の中に舞い降りる。
ここからは徒歩になるけど、昼までには城に着けそうだ。
青い瞳が光ると同時に大きな体が淡い光に包まれ、気づいたときにはヒトの姿に戻った彼に横抱きされていた。
丁寧に地面に下ろされ、白いシャツ姿の彼が穏やかに口角を上げる。
「空の旅は酔わなかったか?」
「とても快適でした。ハーランツさんはいつもあの素敵な景色を見ているんですね。貸してくださったコートも、ありがとうございます」