麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
寒くないようにと羽織らせてくれた上着を返す。
袖を通した後に辺りの様子を探った彼は、警戒を解いて続けた。
「ミティアが気に入ったなら、またいつか背中に乗せよう」
「嬉しいです。ありがとうございます」
自然と私の手を引いて歩きだすハーランツさんに、胸が鳴った。
愛弟子のお守りでも、子猫の散歩でもない。重なった手から伝わる温かな体温が心地よくて、ずっとついていきたくなる。
昨日まではなかった心の変化は、少しくすぐったくて恥ずかしい。
「ハーランツさん」
「うん?」
「私は、あなたとヨルゴード国に来たときにはすでに、運命を共にする覚悟はできているんです」
彼の目的を知った今、他人事ではいられない。
「なので、あなたの側にいるために、聖女として正しい道に導いてみせます」
青い瞳が柔らかく細まった。
一晩考えて、ひとつの結論に辿り着く。
「俺が悪いことをしようとしたら、止めてくれるって意味か?」
「その通りです」
「はは、まいったな。悪いことをする予定しかないぞ」