麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
直球の口説き文句だ。
こちらを優位に立たせたつもりだろうが、主導権を握っているのは相変わらずハーランツさんに思える。
「でも、俺の躾がなっていなかったら、容赦なく聖女の力で従えてもらって構わないぞ」
私に全てを託したようで、忠誠とは違う。利害関係の契約以上の信頼と情がそこにはあった。
私なりに彼を守りたくて「正しい道に導く」なんて大層な発言をしたけれど、ハーランツさんからしてみれば、行動を止められたら仕方がないから付き合ってあげる、くらいの感覚なのかもしれない。
余裕たっぷりに返されて、何も言えない。
「帰ろう、“アルティア”」
こちらを向いた彼は、師匠の顔だ。
騎士団に戻れば、またいつもの騒がしい日常が戻ってくる。
この先に待つものが何かはわからないけど、ずっとハーランツさんに穏やかに名前を呼んでもらう日々が続けばいいな。
ただ、こうやって手を繋いで隣を歩いていたいと、強く願った。