麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない


 こちらはにこにこして紹介するものの、なぜか若い騎士達は顔が引きつっていた。

 一方のハーランツさんは、柔らかな表情のまま彼らに声をかける。


「うちのアルティアが世話になっているそうだな。仲良くしてやってくれ」

「は、はい」


 優しくしてくれる人同士の縁が繋がっていく光景って、すごく微笑ましいわ。

 騎士達はとても緊張しているけど、そんなに硬くならなくても、ハーランツさんは怖い人じゃないのに。

 すると、ハーランツさんは白い手袋から覗く自身の手首を、私の首筋へ軽く擦り当てた。甘く爽やかながらもスパイシーな香りがほのかに鼻をくすぐる。

 驚いて見上げた先に映ったのは、感情が読めないポーカーフェイスだ。


「なんでしょう?」

「虫除けだ」

「この寒い時期にですか? それに、これは普通の香水みたいですけど」

「ああ、問題ない。よく効く」


 ぽんと頭を撫でて、その場を去る背中に眉を寄せる。

 最近、私の稽古にも顔を出してくれるようになったけど、なにか用件があるわけでもなさそうだし、どういう風の吹き回しだろう。

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