麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
師匠を見送る間、いつのまにか、私を囲んでいた騎士達が自分の仕事へと戻っていると気がつく。
全てに疑問符が浮かんでいたとき、隣へ背の高いシルエットがやって来た。
「ハーランツのやつ、なんだか最近、輪にかけて過保護じゃないか?」
声をかけて来たのはイグニス副団長である。
ニヤニヤした彼は、新しいおもちゃを見つけた子どもみたく、非常に楽しそうだ。
「わかりやすい牽制だな。ありゃあ、弟子にする顔じゃない。色々ダダ漏れだ」
「牽制?」
「自慢の子猫がチヤホヤされるようになって気が気じゃないんだろ。あんな様子じゃ、すぐにお前が女だとバレるぞ」
忠告にドキリとした。
もちろん、素性がバレないように最大限の注意を払っているつもりだ。
周囲の騎士は私が男だと思い込んでいるし、恋愛感情を持って接しているわけではないのに、ハーランツさんが牽制をする必要はあるのかしら。
「そうだ、子猫。寮にお前宛ての荷物が届いていたから、確認しておけよ」
イグニス副団長は、事務室からの伝言を伝えて去っていった。
なんだろう。買い物をした記憶はない。