麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
そもそも、公務って一体なにをするんだろう?
そんな心中を察したのか、ハーランツさんが革張りのソファに腰掛けながら話を続けた。
「緊張しなくても大丈夫だ。戦地に赴くわけじゃなく、ただのお遊戯会みたいな場だからな」
「お遊戯会ですか?」
「クリスマスイブの二十四日、ナラエラ国のファニー王女が侍女の婚約を祝して、大規模な祝賀会を開くのは知っているか? 旦那がヨルゴード国出身という縁で、ザヴァヌ王が資産家から買い取ったままになっていた国境の古城を、会場に貸し出すんだ」
話によると、祝賀会は仮面舞踏会で、各国の貴族が身分を隠して参加するようだ。
祝賀会全体の運営はナラエラ国側が仕切り、参加者は武器を持たずに入場するのが条件として提示されている。万が一に備えて、武闘会で選ばれた六名がザヴァヌ王とともに会場に向かうらしい。
「つまり、仮面舞踏会でザヴァヌ王の護衛をすればいいのでしょうか?」
「そうだ。でも、入場時に武器は没収されるし、ディナーも振舞われるから、普通に貴族のお遊びを体験するつもりで行っても楽しいんじゃないか?」