麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない


 仮面舞踏会とは縁がない人生だった。

 身分を予想するゲームや、正体が分かっても口にしないルールは新鮮で面白そうだ。

 素性を探られない場であるため、中には怪しい取り引きをする貴族もいると聞くけれど、戦場で剣を振るうよりはよっぽど安全な公務に思える。

 ファニー王女は各国の貴族や王族に顔が広い。様々なゲストの護衛で来る騎士たちは、皆、屈強な戦士ばかりなはずだ。

 オルデン団長率いる頼りがいのある先輩騎士とともに公務に向かうにしても、ハーランツさんが側にいないのは不安だな。何事も起こらないといいけど……。


「あの暴君を狙う命知らずは、そう多くない。いざとなったら団長に任せて、ミティアは気を張らずに美味しいご飯をいっぱい食べておいで」


 実は、命知らず筆頭のハーランツさんが会場に来れないのが、一番平和なのかしら。

 にこやかな彼の本心が読めないまま、時はあっという間に経っていった。

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