麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
興味を惹かれたのは、古城の隣に立つ時計塔である。
見上げるほど高い時計塔は、以前、城を所有していた資産家の趣味だそうだ。
大きな時計の下は広い展望台になっていて、植物園を一望できそう。
ロータリーに着いたとき、遅れてナラエラ国の馬車が到着した。応接室で面会したファニー王女は美魔女っぽい雰囲気で、体のラインがくっきり映える青のドレスをまとっている。
ウェーブのかかった紺碧の髪と口元のホクロが印象的だ。
側近としてガタイの良い騎士数名が控えていて、城の警備用にと小隊を引き連れていた。
今はあまり使われていないにしても、古城はザヴァヌ王の別邸であるし、本来はヨルゴード国の騎士団を警備に置くのが自然だろうに、運営を全て相手側に任せたのはナラエラ国への信頼を示すための策略なのだろうか?
政治をする人の頭の中はわからない。
「久しいですね、ザヴァヌ王。今夜は良い祝賀会にしましょう」
「ああ。各国に顔が広いファニー王女のゲストとお会いできるのも楽しみだ。我が城を好きに使ってくれ」