麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
友好的な挨拶に見えるが、腹の底では何がくすぶっているのだろう。
命を狙われたり、ハーランツさんから過去の惨禍を聞いたりしてから、ザヴァヌ王の発言や行動が全て怪しい。
今回の公務は、ずっと雲の上の存在だった彼の動向を間近でチェックする絶好の機会かもしれない。
「アルティア、どこへ行く。お前は城外の警備だ」
ザヴァヌ王を背後から追おうとしたそのとき、先輩の騎士に止められた。
聞けば、六人で編成された護衛のうち、オルデン団長とベテランの騎士が側近、ザヴァヌ王の私室のある塔の警備がふたり、私と声をかけてきた先輩騎士が城外の警備を割り当てられたという。
そんな! ザヴァヌ王の真意を探るどころか、美味しいご飯にもありつけないの?
やはり、私はまだ信頼に足る騎士ではないらしい。近づかないとなると、ひたすら目立たないように無事に公務を終えるのが最優先だ。
だんだんと日が落ちて、辺りは夜の闇に包まれ始め、各国のゲストが次々に馬車を乗りつけて、会場へと入っていった。植物園にランプが灯り、古城は幻想的な雰囲気に包まれている。