麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
皆、個性的な仮面を付けていて、口元しかわからない。
ここに来たのは、皆上流階級のゲストだ。素性を隠すルールを利用して、スパイや暗殺者が紛れていてもおかしくないはず。
廊下からこっそり会場を覗くと、ザヴァヌ王を守るようにオルデン団長が距離を取って監視していた。
貴族に紛れて、時折女性のダンスの申し込みに応えているが、ザヴァヌ王と一定の距離を保ち続けている。
すごいわ。あんなプロの護衛がついていれば、暴君の身の心配はしなくて良さそう。
城外の警備は、東と西のエリアに分けられた。私の担当は東であり、ちょうど時計塔がある。
仕事といっても、仮面舞踏会が始まってしまえば、外に人影はなかった。ひとりで散歩をしている気分だ。
せっかくなら、時計塔に登ってみようかしら。闇雲にパトロールをするより、展望台から眺めれば、怪しい動きをしている人をすぐに見つけられるかもしれない。
そんな考えもあったが、頭の中の八割は好奇心だった。