麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
静かな森を少々不気味に感じていたとき、ハーランツさんに手を取られ、木陰に身を潜めるよう腕を引かれた。
「どうしたんですか」
「あれを見ろ」
目線で示された方角に見えたのは、数頭の合成獣だ。まだこちらには気づいていないらしく、すぐに森の奥へと消えていく。
「始末できない数ではないが、できれば下手に相手にしたくないな。血の匂いを撒き散らして仲間が集まる方が厄介だ」
「たしかにそうですね。レストランに着く前も遭遇しましたし、群れで行動しているのかもしれません」
なぜ、この地域は合成獣が多いのだろう。王都ではここまで頻繁に遭遇することはなかった。
やがて身を隠しながら歩くこと数十分、開けた土地に小屋が建っているのに気がつく。
一見、なんの変哲もない廃屋のようだけど、あれが研究所?
気配を殺して、ハーランツさんだけが扉に忍び寄った。木陰から様子を伺う中、彼は数回扉をノックしている。
「ったく、誰だよ。こっちは忙しいってのに」