麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
粗野な声とともに扉を開けたのは、若めの男性だ。
招かれざる客人だと認識するなり急いで扉を閉めようとするものの、ハーランツさんは隙を見逃さず、扉に足を入れてこじ開ける。
「ひいっ! 異端の騎士だ!」
「俺を知っているのか? 光栄だな」
「はっ、離してくれ! 殺されたくない!」
「暴れないでくれ。無駄な殺生はしないさ」
スマートな笑みで拘束したハーランツさんは容赦がない。
しかし、安心したのも束の間、小屋の中からもうひとりの気配が近づく。
「“動きを止めなさい”!」
とっさに言霊の魔力を放つと、石造のごとく体が固まった男性が床に倒れ込んだ。
木陰から出てハーランツさんに駆け寄ったとき、ふたりの顔を見て、ぴんとくる。
小屋に滞在していたのは、私が故郷のサハナ国を出るときに使者としてやって来た若い騎士だった。
ハーランツさんも彼らの正体に気がついたのか、すっと無表情になる。
「まさか、こんな辺境の地に雲隠れしていたとはな。自分を罪を忘れたとは言わせないぞ」
「ご、ごめんなさい! どうしてもザヴァヌ王に逆らえなかったんです!」