麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない


「あれは誰の墓だ? もともと管理人がいたのか?」

「そんな話は聞きませんけど……たまに、ザヴァヌ王が墓前でなにかやっている様子でしたね」


 騎士達を連行しつつ、墓の前まで歩く。墓石には名前が刻まれておらず、ずいぶんと雑な作りである。

 そのとき、ハーランツさんが腰の高さはどの墓石を軽々と持ち上げた。ぎょっとして眺めていると、彼の口角がわずかに上がる。

 墓石の下に現れたのは、小さな鍵穴だ。コートのポケットから取りだした鍵を差し込んだ瞬間、解錠の音が響く。

 丘には、地下への扉が隠されていた。地面にうっすらと切れ込みがあり、雑草が生い茂っていて、普通の人であれば見逃すほどである。

 なんて巧妙な構造なんでしょう。知人のお墓でなければ、近づく者はいない。全てはカモフラージュだったんだ。

 一メートル四方の小さな扉の奥は、石の階段が続いている。

 四人揃って先に進むと、目を疑う光景がそこにはあった。


「ビンゴだな」

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