麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
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「婚約の申し出とは驚きました。詳しくお話をお聞かせ願えますか?」


 都市の中心部に建つ神殿で、戸惑いの声が響く。

 私とロウの前にかしずくのは、ヨルゴード国からやってきたふたりの使者だ。腕章や腰に携えた剣から、若い騎士だと推測できた。

 彼らは順番に口を開く。


「我がヨルゴード国のザヴァヌ王が、この度王妃の選定をすることになったのですが、候補としてサハナ国の聖女であるミティア様の名があがったのです」

「美しく聡明なミティア様の噂はヨルゴードまで届いており、ザヴァヌ王は聖女としての力も高く買っておられます」


 困った。まったく理解が追いつかない。

 ふたりの騎士は会談の場を設けるために私を迎えにきたらしく、こちらは青天の霹靂(へきれき)に動揺が隠せなかった。

 突然婚約なんて、聞いていないわ。好きな人どころか、誰かと恋愛する未来さえ頭になかったのに。


 私、ミティア=アルメーヌは、今年ちょうど二十歳になった。

 すらりと長い手足に小さな顔、銀色の髪を肩甲骨まで伸ばし、宝石を閉じ込めたようなエメラルド色の瞳をした容姿は周囲の目を引くようだが、婚約を申し込まれたのは初めてである。

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