麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
聞くところによると、相手のザヴァヌ王は五十歳であり、歳の差は三十にもなる。
婚約への懸念はその点だけでなく、彼の横暴極まりない悪い噂にもあった。
ザヴァヌ王は史上最も凶悪な暴君であり、自らの欲望のために他国を侵略し、手段を選ばない独裁者だ。
巨万の富を得て裕福な暮らしをしているのは都市部の人間だけで、広大な領地の半分以上の民は貧しい生活を強いられている。
だが、革命を唱えようにもザヴァヌ王が強大な魔力の持ち主であるゆえに、誰も逆らえないというのが厳しい現状だった。
そんな恐ろしい男の元へ嫁ぐなんて、信じられない。
「少し時間をいただけますか」
断りを入れて、ロウと共にそそくさと神殿の柱の陰に向かう。
お互い目を合わせた途端に、現実感が押し寄せて、背中に冷たい汗が流れた。
「どうしてザヴァヌ王は私を選んだのかしら? 政略結婚だとしても、ヨルゴード国がわざわざサハナ国に目を付けるメリットがないでしょう?」