麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
政界においての権力、領地、財力、兵力、そのどれをとってもヨルゴード国は優れている。
一方、サハナ国は豊かな自然だけが取柄といっても過言ではないほどの小国だ。
すると、ロウは言いづらそうに重い口を開く。
「やはり、ミティア様の 言霊の魔力に興味があるからではないでしょうか。聖女としての力も他国に知れ渡るほど強いですし」
腑に落ちると同時に、心臓が鈍く音を立てた。
言霊の魔力というのは、生まれ持った聖女の能力である。
どんな屈強な相手でも『しなさい』と命令形で声をかければ言葉に魔力が宿り、思い通りに従わせることができるのだ。
さらに、言霊の魔力は上限がない。
有無を言わさず行動を操るのは相手の命を握るのと同義で、私が『命を断ちなさい』と言えば、簡単に相手は死んでしまう。
サハナ国が平和を保ってこられたのは、少なからず私の聖女としての力が影響しているだろう。
返り討ちに遭うことを恐れた近隣の領主達は、小国への侵略を踏みとどまったのだ。
「ロウ。あなたの意見を聞かせてほしいの。もし、婚約の話を断ったらどうなると思う?」
「非常に申し上げにくいのですが、ヨルゴード国は国際政治上の権力も強いため、我が国は貿易市場から締め出されてしまうかもしれません。加えて、強国の屈強な騎士団に攻め入られたら、こちらの損害は免れないかと」