麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
一番心が痛いのは就寝だ。今までひとりで使っていたダブルベッドを私に譲り、本人はソファで寝ている。
新しいベッドを買うスペースはないため、律儀にくれたおこづかいで寝袋を購入すると、笑顔で取り上げられてしまった。
先にソファを取って寝たとしても、彼に見つかってベッドまで運ばれるのがオチだ。
「ハーランツさん。さすがに、連日ソファで寝るのは体が休まらないでしょう? せめて交代でベッドを使いませんか?」
「俺は訓練に参加しない間、仮眠できますから、問題ありませんよ」
何度提案しても、同じ返答がくる。
お互いビジネスパートナーでいようと言われたし、そういう取り引きなのだから、あまり気にせずにふたりで寝るのはダメかしら。
せっかく配慮をしてくれている彼にそんな提案をする勇気はないので、結局優しさに甘えている。
「そろそろ午後の訓練の時間ですね。頑張りすぎて、怪我をしないようにしてください」
寮を出て本館の廊下まで見送ってくれた彼は、剣術の指導へと向かっていった。
新人は基礎体力作りがメインだ。もともと神殿で祈りを捧げ、民からの悩み相談を聞く毎日を過ごしていた私は運動が得意ではない。
はやくハーランツさんに直接指導をもらえるレベルにならなくちゃ。