麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
「おい、アルティア」
運動場まで向かう途中、数人の若い騎士に声をかけられた。全員、この前の入団試験で受かった新人である。
「僕になにか用ですか?」
「午後の訓練、オルデン団長が遠征に行く関係でメニューが乗馬に変わったらしいんだ。集合は第二訓練場だってさ」
「そうなんですね。わざわざありがとうございます」
ハーランツさんはなにも言っていなかったけど、急遽変更になったのかな。
手袋とブーツを揃え、急いで指定の場所へ駆ける。しかし、午後の訓練開始時間を過ぎても、誰一人として集まってくる気配がない。
どうしてだろう? 先に小屋へ行って、馬を連れてきたほうがいいかしら?
違和感に首を傾げながら視線をさまよわせていると、遠くの運動場が視界に入る。
「えっ! オルデン団長!?」
そこには、走り込みを始めた新人達に檄を飛ばす団長の姿が見えた。藍色の髪を短く刈り上げたガタイの良いシルエットは紛れもなく団長だ。
慌てて運動場へ向かうと、私を見つけた団長は氷のように冷たい瞳で睨みつける。