麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
「遅い! どこで油を売っていた! 時間厳守は常識だろう」
「申し訳ありません。午後は乗馬に変更になったと聞いて、第二訓練場にいたのですが……」
「下手な言い訳は無用だ。ペナルティとして、走り込みを十周追加する」
そんな!
状況が掴めずに頭が混乱したとき、水分補給のテントで休んでいた新人達と目があった。
しかし、ぱっとすぐに逸らされてしまう。
間違った情報を伝えたせいで気まずいのかしら。誰にだって間違いはあるだろうし、怒ったりしないのに。
「気にしないでください。僕、皆さんより体力がないから、もともと自主練をするつもりだったんです」
「え? あ、ああ」
声をかけると、とても驚いた様子でぎこちなく返事をされた。新人たちは顔を見合わせて複雑そうな顔をしている。
不思議なことは立て続けに起こった。
翌日、座学を受けようと鞄を開けたとき、配布されたばかりの教科書がないと気付く。あらゆる教室を回ってみるものの、どこにも見当たらないのだ。