エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
そこへ、えらく感心した様子のおじさんから、いつにも増して明るいおどけたような声音が放たれた。
「おー、さっすが圭先生ぇ。普段から鍛えてるだけあって、動きも俊敏だねぇ。おっと、いけない。午後一でアポが入ってるんだったぁ。じゃあ、仲良し同期のお二人さん、仲がいいのはいいけど、院内ではほどほどにねぇ」
しかも、予定があるからと、こんな有様の私のことを放置してさっさと立ち去ろうとしている。
それだけでも許せないのに、薄情なおじさんが去り際に放った言葉の内容が内容だっただけに、怒り心頭の私は黙っていられなくなって。
『ちょっと、何とんちんかんなこといっちゃってんのよッ! こら、待てッ! クソじじィー!』
そう言って必死になって大声を張り上げようにも。
当然、窪塚にしっかりと口元を封じられているため、ただただジタバタするのが関の山だ。
お陰で、窪塚に余計に強い力で柱へと押しつけられてしまうことになり、よりいっそうの高密着状態になってしまっている。
おじさんの背中が見えなくなってから、ハタとそのことに気づくこととなった私の脳裏には、つい先日のあの夜の生々しい映像の断片がフラッシュバックのように次々に浮かび上がってくるのだった。