エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
両親は、在学中に諦めてくれると思っていたようだが、卒業間近、おじさんの元で働きたいと言いだした私に対して猛反対。
そこで、絶縁することとなったというわけだ。
絶縁といっても、就職したのを機に、両親へ対する反発心から、母親の旧姓である『高梨』を名乗っているだけで、戸籍上は今も『神宮寺《じんぐうじ》鈴』のままだし。
一人暮らししようと企てていたのだって、心配性の父によって阻止されてしまい。
結局は、母の実家が経営している、江戸時代から代々引き継がれてきたという老舗料亭『橘』の後継者である母の兄で私の伯父でもある高梨侑磨が世帯主である高梨家で居候中の身である。
因みに、私の父は、日本全国は元より海外にも進出しており、チョコだけでなく日本製の高級腕時計などの宝飾品やオーダーメイドのスーツなど幅広く取り扱っている、誰もが知る老舗高級チョコレートブランド『YAMATO』の社長を務めている。
なんともお偉い職に就いてはいるが、娘である私にとっては、ただの口うるさい頑固じじいでしかなかった。
思いがけず交通事故に遭遇してしまったがために、ひどく懐かしい夢をみたせいか、絶縁状態である両親、特に心配性で口やかましい父のことまで夢に出てきてしまい、気分は最悪。
そのせいか、寝苦しさを覚えてしまった私が寝返りを打ったところで何かにぶつかり、なんだろうと、目を開けたその先に、こちらに向いて転た寝している窪塚の端正な寝顔が待ち受けていたものだから、驚きすぎて、危うく口から心臓でも飛び出すんじゃないかと、要らぬ心配をしてしまったほどだ。