エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 私の言葉に驚愕の表情を湛えた窪塚は、瞠目した眼を尚もこれでもかというように大きく見開いて、私のことを凝視したまま固まってしまっている。

 ーーそんなに可笑しなことだったのかな?

 でも、女の私にとっては未知のモノでしかないし、興味が湧くのは自然なことだと思うんだけど。

 あっ、でも、そういえば、窪塚には処女だってことは隠してあるんだった。

 も、もしかして、処女だってことがバレちゃったのかな?

 ーーど、どうしよう。

 窪塚のあまりの驚きように、さっきの自分の発言に対して、言いようのない不安が押し寄せてくる。

 突然降りてしまった気まずい沈黙に、心臓が嫌な音を立て始め、だんだんいたたまれなくなってきた。

 ーーやっぱり撤回した方がいいのかな?

 そう思いかけていたところに、さっきと同様、驚愕の表情をした窪塚からようやく声が届いて、ホッしたのも束の間。

「お前、興味があるって。そんな……処女じゃあるまいし……」

 『処女』という単語が飛び出してきた刹那、ドキンと鼓動が大きく跳ね上がった。

 ーーヤバい。やっぱりバレちゃった?

 心拍数が最高潮に達しかけた頃、今度はなにやら合点がいったとばかりに声を放った窪塚の言葉に、私は安堵することになった。

「あぁ、好きな男には恥ずかしくてそんなこと言えないけど、好きでもなんでもない、むしろ嫌いな俺にはなんの抵抗もなくなんでも言えるってわけか……なるほどな」

 ーーよかった。

 どうやら窪塚は勘違いしてくれたらしい。

「女って、そういう残酷なとこあるよな……」

 けれども、続けざまに放たれたこの言葉に、私は再び疑問を抱えることとなって。

「……え? それってどういう」
「あぁ、いや、別に。なんでもねーよ」
「……そう」

 すぐに訊き返したものの、結局は答えてはもらえず終いだった。
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