エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
もう声を潜めるような悠長なことしてられないと焦った私が窪塚を止めようと放った言葉も。
「ちょっと、どういう意味よッ! 説明しなさいよッ!」
聞いてるのか聞いていないのか、窪塚は小声で得意げに、
「悪いようにはしないから、まぁ、見とけ」
そんなことを言ってきたかみたかで、今度は一際大きな声を放った。
「だから、何度も言ってるだろう? ずっと忙しくて寂しい思いさせて悪かったって。本当にごめん。俺が好きなのは高梨だけだから、信じてほしい」
はぁ!? どういうこと?! 意味分かんないんですけど?!
それに、『俺が好きなのは高梨だけだから』って、どういうつもりよッ!
ーーま、まさかッ!
窪塚の突飛な言動に胸中で悪態をついていて、不意に、最悪な展開が脳裏に浮上してきた、その瞬間。
つい先日のあの夜の光景が再びフラッシュバックするかのように、脳裏に浮かんでくる映像と眼前の実像とがシンクロするかのようにして、端正な顔をぐっと近づけてきた窪塚によって私の唇はあっけなく奪われてしまっていた。
麗らかな春の陽差し射し込むメインストリートには、外科医の輩だけじゃなく、行き交う男女の職員から次々に放たれる、嘆くような声や黄色い悲鳴らで埋め尽くされていたのだった。