エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
妙にひっかかったものの、そのときの窪塚の表情に微かに翳りが見えた気がして、追及することなどできなかったのだ。
だっておそらくそれは、例の幼馴染みに関連することなのだろうから、そっとしておいた方が賢明かな……という考えが咄嗟に脳裏に過ったからでもあった。
そんなこともあって、少々気持ちが沈んでいるところに、私の願いに対しての窪塚からの返答が届いたのだが……。
「けど、それには応えてやれねーわ」
こと情事に関しては意地悪な窪塚だけど、なんやかんや言ってもいつも優しいし、きっと聞き入れてもらえるだろうと思っていたのに。物の見事に当てが外れて、窪塚には拒否られてしまい。
当然、納得のいかない私がすぐに異議を唱えたにもかかわらず。
「ど、どうしてよッ?」
「どうしてって。……俺は、女にあれこれ指図されんのが嫌いなんだよ。女からグイグイこられるのも興醒めっつーか、萎えるっつーか。兎に角、自分のペース乱されんのがどうにも苦手なんだわ。だから応えてやれない」
「そ、そう、なんだ……」
「あぁ、まぁな」
「……ふうん」
もっともらしいことを言ってきた窪塚によって、二度にわたってやんわりとけれどキッパリと断られてしまい。
なにやらうまいこと言って煙にでも巻かれたような心地だ。
なにより、お前はただのセフレなんだって、お前は幼馴染みの身代わりでしかないんだって、きっちりと線引されたような、そんな気がした。