エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
こういうときには毎回決まって、ところ構わず、真っ赤になって大慌てで彩の口を塞ぐという、わかりやすすぎる狼狽えぶりを披露してしまっていた。
『////ーーも、もーッ! 彩ってばッ。声が大きいんだってばぁ!』
『ちょっ、んッんん~~ッ!?』
その光景をすれ違う職員らに生温かな視線でチラチラと盗み見られるという、なんとも恥ずかしい場面を幾度となく、やり過ごしていたのだった。
それもこれも、窪塚のことを好きだという想いに突き動かされてしまっているせいだ。
これまで勉強と仕事のことしか頭になかった自分が、まさか、こんな風に、恋愛ごとに右往左往する日が来るなんて、吃驚だし、二月前には夢にも思っちゃいなかった。
まったく、人生、いつ何時何があるか分からないものだ。
でも、窪塚のことを好きだと自覚してからというもの、相変わらず仕事にも勉強にも忙殺されて毎日ヘトヘトだけど。
ーーどっちも頑張るぞ。やってやるぞ。
という具合に、前向きに、ヤル気とパワーが漲ってきて、以前とは比べものになんないくらい、仕事でもプライベートでも、とっても充実した日々を送れている気がする。
なにより驚いたのが、そんな前向きな自分のことをまんざらでもない、むしろ好きだ、と想えるようになれたことだった。
以前は、影でビッチなんて呼ばれてるにもかかわらず、全然女らしくもなく、可愛げのない自分のことがどうにも好きになれずにいたのが嘘みたいだ。
恋のパワーは偉大なんだなって、しみじみ想う今日この頃。
そんな日々を経て、以前、同期の加納に出欠の確認をされた際に、偶然居合わせた窪塚が珍しく参加したいと言いだした、例のセミナーが開催される当日の朝を迎えたのだった。