エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
もう怒るのも馬鹿馬鹿しくなってきて、けれども、このまま黙ってもいられない。
「フンッ、誰があんたに感謝なんか。バッカじゃないの? 寝言は寝ていえ、このクズ男ッ!」
これみよがしに、盛大な悪態を吐き捨てたのだが。
その言葉を聞き届けた途端、窪塚の切れ長の漆黒の双眸が一瞬妖しい光を放ったような気がした次の刹那、腕をぐいっと引っ張られ。
「キャッ」
短い悲鳴のような高い声音を放った私の身体が突如反転したと思った時には、既にベッドの上で仰向けになっていた。
ーーえッ!? いきなり何?
あまりに突然過ぎて、自分の身に何が起こったのか状況が掴めない。
とにかく状況を確かめようと、反射的に閉ざしてしまってた瞼を開け放った私の視界には、私のことを組み敷いて、しれしれっとしたすまし顔で見下ろしている窪塚の姿が待ち受けていたのだった。
「な、何よ?」
いきなり距離を詰められて混乱しつつも、この高密着状態からなんとかして逃れようと窪塚の胸を両手で押しやると同時。
「何って。お前が『寝言は寝ていえ』っつーから、今から実行しようと思って」
なにやら愉しそうな表情に取って代わった窪塚から、信じられない言葉が降ってきた。