エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
寝ても醒めても〜窪塚視点〜
医大時代からの腐れ縁。
そう思っているのは、本名神宮寺鈴、今は事情により母親の旧姓を名乗っている高梨鈴だけだ。
まさか、俺が、医大に入る前のオープンキャンパスの際に一目惚れしていたことは勿論。
その頃から、俺がずっと片思いしてたなんてことも、夢にも思ってないんだろうなぁ。
そして今もずっと諦めきれずにいるなんてことも。
まぁ、それに関しては、俺自身、一番驚いてることなんだから無理もないか。
それに本来ならば、ここ、光石総合病院ではなく、脳神経外科の権威で、いわゆる『神の手』なんて呼ばれている親父が経営する総合病院で勤務する予定だった。
でもどうしても、親父の後ろ盾がなくとも、自分の腕一本で試してみたい。
そういう気持ちと。
勿論、高梨のことを諦めきれないという想いも少なからずあった。
それがまさか、三年前の一件が元で、それ以前よりも嫌われてしまうことになるとは思いもしなかったけれど。
兎に角、その二つの理由から、ここ光石総合病院で研修医として勤めることに決めたのだ。
そのことに関して(高梨のことは口外していない)、親父には期限こそ定められはしたが、それ以外に関しては特に何も言われなかった。
その代わり、医大の教授らからは、大学に残るように強く勧められもした。
そうなっていたら、きっと今頃は、医大の同期である藤堂と同じように、教授の娘との縁談話と一緒に、将来教授になる足がかりを得られたかもしれない。
でも、俺には、元よりそんなもんには興味なんてさらさらなかった。
俺の親父がそうであったように、医大のしがらみなんて関係なく、己の腕一本でのし上がってみせるーーそんな想いでずっと今まで突っ走ってきたくらいだ。