エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
それは、高梨の親戚である譲院長が高梨の父親に表面上は彼氏である俺のことを話していたらの話ではあるが。
親父の大学時代の後輩で、昔からなにかと可愛がってくれていた譲院長には悪いが、あの人ちょっと押しに弱いところがあるし、嘘だって下手だ。
カマをかけられてる可能性だって充分にある。
もしもそうだとして、高梨の父親が俺の素性を既に調べ上げていたとすれば、俺と優との関係性を掴んでいるんじゃないかというものだ。
だからこそ、高梨から俺のことを遠ざけたかったんじゃないのかと思えてならなかった。
高梨には四つ離れた弟がいるらしいが、親からすると、初めての子供で、しかも可愛い一人娘とくれば、目に入れても痛くないくらい可愛いものだろうし。
高梨のことを心配するあまり、外科医になるのを猛反対していたともいっていたし、充分あり得ることだと思う。
あんな事故に遭ったんだ。PTSDにも苦しんでもきただろうし。
極度の心配性らしい父親が、その事故の記憶を想起させる要素を排除しようという考えを持っていたとしても、おかしくはない。
高梨の父親とは、今回初めて対峙することとなったが、あの鬼気迫るような雰囲気からして、やっぱり思った通りなのではと俺は睨んでいた。
けど、なんとか、懸念してた見合いだけは回避することができたのだから、ひとまずはよしとしよう。
……というか、よしとするしかない。