エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
それに、今回のことで、天然記念物かってくらいの鈍すぎる高梨も、さすがに俺の気持ちにも勘づいてくれただろうし。
そう考えると、悪いことばかりでもないか。
そうはいっても、肝心の高梨の気持ちがわからないんじゃな。
でも、以前と比べものにならないくらいには、少なからず信頼関係も築けてるはずだよな。
昨日は、セミナーサボるって言ったときもすぐに快諾してくれたし、徹夜明けだった俺のことまで気遣ってもくれたし。
『傍にいて欲しい』とは、さすがに言えはしなかったが、ずっと傍にいてもくれたんだ。
少しは、脈があるって思っても、いいんだよな。
けど、これからは、職場でも譲院長の目もあるし、これまでみたいに高梨に近づけなくなるかもしれない。
ーーさて、どうしたもんか……。
思考がそこまで行きあたったところでふと腕時計に目をとめると、時刻は午後十一時十二分になろうとしていた。
高梨の父親との対峙中に職場から呼び出された俺は、急変した担当患者の緊急オペに執刀医である樹先生の助手として執刀し、小一時間ほど前に無事に終えたところだ。