エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
あれから色々と策を練ってはいるが、忙しい日々の業務と脳外の専門医になるため、脳神経外科・脳卒中の基本的診療技術は勿論、顕微鏡手術やカテーテル手術などの様々なオペ技術の獲得に向けての勉強に加えて、樹先生の論文の手伝いに追われてもいたために、これといった策も思いつかず、ただただ時間だけが経過していた。
気づけば、高梨の父親と約束してから、もうすぐニ週間が過ぎようとしている。
その間にも、職場では、高梨と顔を合わせることも何度かあるにはあったのだが。
父親との約束があるせいか、その時には決まって、俺からあからさまにふいっと視線を逸らして避けられてしまうため、挨拶さえままならない状態だった。
セフレになる以前の関係性に戻ってしまったようで、寂しいと思う一方で。
嘘のつけない真面目な高梨のことだ。見合いが嫌なのもあるだろうが、父親との約束を律儀に守ろうとしてのことだろう。
ーーそういう生真面目なところも、あいつらしくて可愛いなぁ。
なんておめでたいことを思いつつも、譲院長の目もあるし、俺も高梨に倣って強引に引き止めたりせずにいたため、結局あれ以来一度も話せてはいないのだった。
お陰で、近頃では、高梨が夢(断じていかがわしい夢とかではない)にまで出てくるようになって。
目を覚ますと、極たまにではあるが、夢精してしまっているという、なんとも情けない有様だった。
ーー俺は思春期の中学生にでも逆戻りしたのか? 否、中学生以下だな。
近頃の俺は、そう言って、寝起きに自分で自分にツッコミを入れて自虐するという実に虚しい朝を何度かやり過ごしてもいた。
ちなみに、こんな状況で言い寄られても対処のしようがないため、俺の独断で譲院長に頼んで、周囲には、今まで通り付き合っているという体にはしている。
それに対して高梨が否定してはいないようなので、今のところ、そっちの心配はなさそうだった。