エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
だから、高梨がまさか処女だなんて思いもしなかったし、気づけるはずもなかったということにはなるが、俺がやらかしてしまったことには違いない。
思い返してみれば、俺、知らなかったとはいえ、これまで高梨に対して、相当酷いこと言っちゃってるよな。
あの頃の俺は、高梨に嫌われていたことで望みなんかないと思って、だったらとことん嫌われて諦めざるを得ない状況に自ら追い込もうとしていた。
ーーなのに、高梨は本当に俺のこと好きになってくれてんのか?
否、でも、セミナー当日に久々に逢った時には、以前までとはまったくといっていいほど醸し出す空気感が違っていて、雰囲気も柔らかで優しかったし、俺の我が儘も快く聞き入れてくれたし、朝までずっと傍にもいてくれた。
ーー藤堂の言葉を信じてもいいんだよな。
高梨は俺のことをずっと意識してたらしいのに、その自覚がなかったらしいし。
確かに、高梨は昔から俺のことを敵視してたし、藤堂のいうように、それが仮に好きの裏返しだったとしても、そのことに本人が気づいていなかったんだから、そんな相手にいきなり、一夜の過ちで処女を奪われたんだ。
そりゃ、あの夜のことを覚えていなかった高梨からすると、相当なショックだったに違いないし、隠しておきたいとも思うよな。
けど、それだけは言って欲しかった。
そしたら、画像なんかで脅して、セフレになれなんて強要しなかったのに。
……なんて、今更そんなこと言ってもな。
お互いにそんな事情なんて知らなかったんだし、今更こんなことでウジウジ悩んでても仕方ないよな。
覆水盆に返らず。もう取り返しのつかないことだ。
ーーもうここまできたら、いい加減、腹をくくるしかないよな。
俺はここへきて、今度こそ、高梨とちゃんと向き合う覚悟を決めたのだった。