エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 腹をくくったことで、パニックだった頭の中もようやく落ち着きを取り戻した俺の元に、笑いが収まったらしい藤堂から打って変わって真剣な声音が放たれて。

 俺が意識を向けると、怖いくらいに真剣な面持ちで俺のことを射抜くようにして見据えている藤堂の姿が待ち構えていた。

「窪塚、これで昔の借りはきっちり返したからな。これから先、もしも高梨を泣かせるようなことがあったら、今度こそ遠慮なんてしない。勿論、同じ脳外科医としても、いつかきっとお前を超えてみせる」

「ああ。望むところだ。お前なんかの出る幕なんてねーよ。高梨は、この俺が絶対に幸せにしてみせる。勿論、脳外科医としても絶対に天辺までのし上がってみせる」

 俺も、正面の藤堂と真っ向から向き合って、お互い宣戦布告し合うようにして、男同士の固い約束を交わしあった。

 医大生の頃から、恋敵としてずっと捉えてきた藤堂と、こんな風に腹を割って語り合ったのは初めてかもしれない。

 ーー男同士の友情っていうのも案外いいもんだな。

 あれからほどなくしてバーを出て駅前で藤堂と別れてから、ふとそんなことを思っていた時のことだ。

 何故か不意に、優のことを思い出してしまった俺は、高梨の命の恩人である優と高梨に今も想いを寄せている藤堂のためにもーー今度こそ高梨と向き合って、高梨のことをなにがなんでもこの俺が絶対に幸せにしてみせる。

 この夜、俺は、そう心に固く誓ったのだった。
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