エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
そんなこんなで、現在の時刻は、午後六時三〇分ジャスト。
偶然にも、窪塚にラブの付くホテルに置き去りにされてしまったあの朝と時計の針の指し示す時刻が同じだったことで、ふとあの時の記憶が呼び起こされた。
もうあれから五ヶ月も経つんだ。
そんなに長い間、窪塚と不埒な関係を続けてきたのか。
けどもう、それも今日でお終い。
どういうことかというと、今日こそは、窪塚にプレゼントしてもらったイヤーカフを返して、不埒な関係を解消してもらうつもりだからだ。
いつもより少し早めに仕事を上がらせてもらった私は、窪塚の住むマンションの共用エントランスに赴いている。
そうしてつい先ほどインターフォンで対応してくれた窪塚の、熱のせいか寝起きのような掠れた声が聞こえてきて、私だとわかると、一瞬だけ妙な間があったけれど、数秒して再び聞こえてきた窪塚の少し掠れた声により促されるままに私は最上階専用のエレベーターへと乗り込んだ。
ほどなくして窪塚の部屋がある最上階へと到着したエレベーターの扉が開け放たれた刹那。
「ーーッ!?」
眼前に現れた窪塚に驚いている間に、なにやら喉から絞り出すような苦しげな声音で、
「すっげー逢いたかったっ」
そんなことを言ってきた窪塚の逞しい腕により、私の身体は囲い込むようにして閉じ込められてしまっていた。
「ギャッ!? ちょっと。もー、ヤダッ! 離してッ!」
「死んでも嫌だッ! 一生離してやんねー」
窪塚に抱きしめられてしまったことで我を取り戻した私が驚いて、いつもの色気の欠片もない短い悲鳴のような声を出してすぐ、窪塚のことを振り払おうと必死の抵抗を見せるも、窪塚からは身体を通して、聞き分けのない子供みたいな声が返ってくるだけで離してくれそうにない。