エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

「まったく、人の気も知らねーで。けど、メチャクチャ嬉しい。俺の前で、鈴が笑ったり、泣いたり、怒ったり、強がったり、照れ隠しでツンとするとこも、そうやって不意に素直なこと言ってくるとこも。鈴の見せる表情や仕草のどれもこれもが、メチャクチャ可愛くて堪んねー」

「////」

 窪塚からの言葉に、照れもあるが、熱いものと一緒に嬉しさがこみ上げる。

 自分の長所も短所も何もかもひっくるめて受け入れてくれたこともそうだし、可愛げのない私のことを可愛いなんて想ってもらえていることもそうだ。

 嬉しいと想うと同時に、夢でも見ているようで、まるで現実味がない。

 ぽうっとしているところに、僅かに困ったような表情を垣間見せた窪塚の端正な顔がキリリとした表情に豹変し、今度は低い声音を響かせた。

「けど、今からは俺だけだ。そんな無防備なとこ、誰にも見せないで欲しい。ずっとずっと俺だけだからな」

「ーーッ!?」

「おい、こら、わかってんのかよ?」

 その直後、未だ夢うつつでぽうっとしてしまっていた私に対して、窪塚がムッとして放った独占欲丸出しの言葉で、ようやく夢でもなんでもないんだ。そう思うと、もう嬉しくてどうしようもなくなってくる。

「うん。けど、そんなに心配しなくても、私、全然モテないから大丈夫だってばッ! けど、そんな風に言ってもらえてメチャクチャ嬉しい」

 どうやら心配性らしい窪塚のことを少しでも安心させようと放った言葉は、やぶ蛇だったらしい。

 ちゃんと嬉しいってことも伝えたはずだったのだけれど、私の言葉を耳にした瞬間、窪塚は眉を顰めて、盛大な溜息を吐き出してから、

「……これだから、無自覚天然記念物は。俺が研修医になってから、何度しつこい取り巻きのこと蹴散らしてきたかも知らねーで。ったく」

耳に届かないほどの潜めた小さな声でごにょごにょと独り言ちてきた。
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