エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 おそらく、いいや、絶対に。

 こういうときにドSっぷりを遺憾なく発揮してくる窪塚のことだから、私から『もうダメ。我慢できない。窪塚が欲しい』と訴えてくるのを待っているに違いない。

 当然、恥ずかしいし、悔しいという気持ちだってある。

 けれどももうそんなものはどうだっていい。

 窪塚がそうして欲しいと願うなら、どんなことだって叶えてあげたいって思うのだ。

 だからって素直にはなかなか口にはできない。

 窪塚だってわかっているはずだ。

 だから敢えてそう仕向けているのかは知りようがないが。

 初めて本気で好きになった窪塚には、なんだって伝えておきたいって思う。

 これまでは、お互いに想いをひた隠しにしてきて、嘘で塗り固めてきたのだから余計だ。

 これから少しずつ少しずつそういうことを積み重ねて、いつかお互いの両親のようになれたらいいなぁ。

 そしていつか子供にも恵まれて、素敵な家族になっていけたら幸せだろうなぁ。

 こんなこといったら大袈裟かもしれないけれど、その一歩を踏み出すような想いで、私は窪塚に向けて、声の限りに想いを紡ぎ出す。

「く、くぼ……づかッ。も……ダメぇ。窪塚……が、欲しい」

 最初こそ、喉が張り付いて声が出ずらかったものの、なんとかちゃんと言い切ることができた。
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