エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
それに対して私は、窪塚の腕の中で背中に腕を回して、必死にしがみついていたようだ。
そんな私のことを余裕がないながらも、やっぱり窪塚は気遣わしげに、私の顔や身体に優しい甘やかな口づけを降らし続けていたようだった。
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窪塚がちゃんと好きだと言ってくれていたこともそうだが。
その時に、無数のキスの雨を降らせていたはずの痕跡が一つとして残っていなかったことにも驚いた。
おそらく、窪塚のことを嫌っていた私のことを気遣ってのことだったのだろう。
窪塚のことだから、私とこうして想いが通じ合っていなかったら、ずっとそのまま本当のことは話さずにいたかもしれない。
否、絶対にそうしていたに違いない。
そんなにも想っていてくれたんだと、嬉しい反面。
窪塚の心情を想うと、胸が締め付けられる心地がする。
なんとかすぐに意識を取り戻せたものの、あの夜の記憶の断片のせいで、また後悔の念に囚われそうになっていた。
そこに、窪塚のとても心配そうな声音が意識に割り込んできて。
「鈴……」
その声でようやく現実世界に引き戻されることになった。
声に導かれた私が目を向けると、声音同様に不安にくれる窪塚の端正な顔が視界に映し出された、その瞬間。
感極まってしまった私は窪塚の胸にぎゅっと抱きついてしまっていた。
そんな私のことを逞しい腕にふわりと包み込むようにして抱きしめてくれた窪塚は、まるで全部理解してくれているかように、黙って背中を擦ってくれている。
実際には、達した直後なので、身体を気遣ってくれているのだろう。