エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
まさかの延長戦
途端に胸の鼓動が尋常じゃない早さで加速し始めてしまった。
そればかりか、今の今まで怒りに支配されていたのに、そんなものなどどこかに吹き飛び、それらと入れ替わるようにして、恐怖心にも似た感情が何処からともなく浮上してくる。
それは、ゆっくりと焦らすようにして迫ってきた窪塚の表情が、この前初めて目の当たりにした、欲情を滲ませた雄を彷彿とさせるものだったせいだ。
そんななんとも言えない妖艶さを纏った窪塚の姿をまざまざと見せつけられたら、否が応でも、窪塚が男だということを意識させられるのは勿論のこと。
いくら怒りに任せて抗ったところで、女である以上、男である窪塚には到底敵わないのだから、そりゃ怖くもなる。
その上、窪塚のそういう姿を見慣れていないせいもあって、窪塚が見知らぬ男のように見えてしまうから余計だ。
無意識に瞼をギュッと強く閉ざしてしまってた私の頬に、そうっと優しく撫でるようにして手を添えてきた窪塚。
不覚にも、ビクッと肩を震わせてしまった私に向けて、窪塚から思いの外優しい声音が降り注いだ。