エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 さっき見かけた外科医の輩と同じロイヤルブルーのスクラブが嫌味なくらいに似合っているのも、なんだか癪だし。

 憎たらしいくらいに整った、この顔を見ているだけでも忌々しい。

 誰が呼び始めたのか、『脳外の貴公子』なんて言葉がピッタリのあっさりとした小顔に、無造作に掻き上げられ少し茶色がかって見える柔らかな漆黒のサラサラヘア。

 それから、八頭身という、百六十センチジャストの私が見上げるくらいの、おそらく百八十センチはあるだろう長身ときてる。

 おまけに、『外科医は身体が資本だ』とかいって、医大の頃から鍛えていたせいで、ほどよい筋肉質で均整のとれたスタイルをこれでもかというようにひけらかしている。

 ……というのは、つい最近、間近で見たくもないのに嫌というくらい目にしてしまった私の主観だけれど、そう見えてしまうのだからしょうがない。

 元を辿れば、この男が専攻医という同じ立場でありながら、一段どころか二段も三段も飛ばしてどんどん先へと進んで行くから……いや、そんなの今に始まったことじゃない。

 医大の入学時から主席で、それからずっとトップを独走してきて、大学の教授にも一目置かれていたほどの、

『医者になるべくして生まれてきた』

なんて言われてきた、絵に描いたような天才肌の、この男のことがどうにも気に食わなかったのだ。

 一番の理由は、弱点をあっさり見破られてしまったからなのだけど。
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