エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 無性に腹が立ってきて、何かを返したくとも、あの夜のことを言われてしまうと、その時の生々しいあれやこれやの光景が走馬灯のように蘇ってくるものだから、腹立たしさよりも羞恥の方が勝ってしまう。

 真っ赤になって身を竦めていることしかできない有様だ。

 そんな私のことを窪塚は、満足そうに見下ろしながらに、私のちょうど右側の鎖骨辺りでシュシュによって束ねている、胸元までの長さの癖のない黒い髪に手をかけた。

 そうして、シュシュをゆっくりと髪から抜き取り、一房だけ手に取った窪塚がゆっくりと語り始めた声が私の耳に熱い吐息と共に流れ込んでくる。

「嫌いな俺の腕の中で、この、艶やかで絹糸みたいに綺麗な髪を振り乱して、可愛い声で喘ぎながら、乱れに乱れて。嫌いな俺に縋るようにしてギュッてしがみついてくるお前の、その反応のどれもこれもが、普段のお前からは想像もつかないくらい可愛い過ぎたもんだからさ。それ思い出しただけで、結構ヤバい。もう、俺、癖になりそうだわ」

 まさかそんな言葉が窪塚から返ってくるなんて夢にも思わなかったから、驚きつつもなんとか放った声にも。

「////ーーこっ、この変態ッ!」
「そんな口をきけるのも今のうちだから、なんとでもいえよ。それに、ついこの前、可愛いお前の痴態見たせいか、お前に何か言われたところで、なんとも思わねーわ」

 私の髪を指に絡めて弄ぶ窪塚が心底愉しそうな表情で面白おかしく、羞恥に悶える私のことを揶揄うようなことを言ってくる。
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