エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
おじさんへの釘は刺したものの、朝から気分が頗る悪くなり、これまでなら気にもとめなかったことまでいちいち気にかかってしまい。
院内のあちこちから噂話は聞こえてきて耳障りだし、同僚から無遠慮に向けられる好奇の目も気に障るしで、その日の気分は最低最悪。
陰口や好奇の目に関しては、ある程度予想していたことでもあったのだが、意外なこともあった。
それは、窪塚のことで女性職員からの風当たりが相当キツくなるだろうと思っていたのが、案外そうでもなく。
一月経過した今でも不思議と平穏に過ごせている。
窪塚曰く、『お前が院長の元愛人てことで、下手に手出しできないんじゃないか』ということだった。
そうはいっても、同僚のなかには空気の読めない人もいて、根掘り葉掘り訊いてくる者もいるのはいるが、それは今に始まったことじゃないからもう慣れっこだ。
そして窪塚とはどうなっているかというとーー。
あれ以来、何故か示し合わせでもしたかのように、毎度毎度当直日が被り、その都度、何処からともなく湧いて出た窪塚によって、さも当然のことのようにあっけなく捕獲され。
オペの後だ、なんだかんだと理由をつけては、あの日同様に仮眠室での情事に付き合わされている。といった状況だ。
そんな日々を経て、現在の季節は六月。
ついこの前まで爽やかな晴天続きで、そよそよと心地いい風が吹いてたっていうのに、あいにくのドス黒い雲に覆われた曇天の空を見上げるたび憂鬱な気分になる。
理由は勿論、もうすぐジメジメとした梅雨の嫌な季節を迎えることと、両親のこと、プラス、窪塚のセフレであるということに対してだ。