堂くん、言わないで。
「ぜってーやっかみだって。僻んでんだよ、安藤さん可愛いし」
うれしくなかった。
可愛いって言われても、なにもうれしくなかった。
むしろさぁぁっと青ざめてしまう。
そんな大きな声で“やっかみ”とか“僻み”とか、
へんなこと言わないで……!
火に油を注ぐような彼の発言に、周りの男の子たちがうんうんと同意してもっと油を注ぐ。
ただでさえ張りつめていた空気が、もっとぴんと鋭く尖ったものに変わった。
「なんならさー俺たちと一緒にいる?」
「い……」
「え、なんか言った?」
「いっ、いいですっ……!」
いきなり立ちあがったわたしに、男の子たちはびっくりしていた。
まさか”あの安藤”に断られるなんて思わなかったのかも。
そのまま人の壁を押しのけるようにして、わたしは廊下に飛びだした。
あのまま教室にいるのはさすがに耐えられない。
HRが始まるまで、どこかで時間を潰そうと思った。