堂くん、言わないで。
「どこに行こうかな……」
まっさきに浮かんだのは図書室。
すぐにその候補を打ち消した。
あそこには闇の王子がいる。
いまいちばん顔を合わせたくない人でもあり、合わせてはいけない人でもあった。
うちの学校は危険だからという理由で屋上も開放してない。
どこか空いている教室にでもいよう、と。
ふたたび歩き出そうとしたときだった。
「んあ?お、みくるちゃんじゃんー」
「あ……なつめくん」
「やっほーはよー今日もかわいいね」
廊下の向こうから歩いてきた棗くんは、ゆったりとした足どりでわたしの近くに来る。
いま登校したのか、かばんも持ったままだった。