堂くん、言わないで。
「なゆちゃん……」
『ん?』
「わたし、ちょっとコンビニ行ってくる」
『なした急に。いいけど、気をつけて行きなよ?』
机の上にあったお財布をつかんで、パーカーを羽織る。
カイロになれって、つまりカイロをもってこいってことだよね?
わたしがカイロになるってことじゃないよね?
だって、実は、わたしも何気に人間なんだよ。
人間がカイロになれるわけない……よね?
いまは5月も中旬。
もう冬なんかとっくに過ぎたのに、カイロなんて売ってるかな。
おでんが売ってないんだから、もしかしたらカイロも置いてないのかもしれない。
というか絶対にない。
そこまで考えたところで、はっとあることに気づいた。
「な、ななななゆちゃん!」
『なになに今度はどうした』
「カイロはやっぱり桐灰のがいいのかな……」
『いや知らんわぁ』