堂くん、言わないで。
いま話題の渦中にいるわたし、安藤みくる。
棗くんや堂くんをたぶらかしていると、全校生徒の女の子たちから目の敵にされている最中。
今日だって朝、通りすがりにこんな会話を耳にした。
『あの人、堂恭花を手なずけたらしいよ』
『え?あたしは逆に奴隷にされたって聞いたけど』
『私、なにげ堂センパイ狙ってたんだけどなあ』
『いやーあんたのほうが可愛いよ。大丈夫だって』
『えーそうかなーそっちのほうが可愛いってぇ』
『いやいや最近太ったし、このへんとか肉やばいし』
『ぜんぜん太ってないじゃーん。細くて脚長いし、私のがやばいよぉ』
途中からは女の子特有の褒め合いになっていた。
それでもわたしが横を通るときはすごく冷たい視線を向けられて。
奴隷にされた、というワードがけっこう胸にグサッと刺さった。
もちろんわたしは堂くんを手なずけたつもりはないし、向こうもわたしを奴隷だと思ってないと思う……たぶん。