堂くん、言わないで。
「好きだから」
*
ぱっくりあいた心の傷は、ひらきっぱなしというわけでもなく。
時間が縫合するように、すこしずつ傷口をふさいでいってくれた。
ひとりで行動することも、ひとりでごはんを食べることにも慣れつつあった頃────
残すは終礼だけになったHRの時間にて。
わたしはこれまたひとりで黒板の前に立たされていた。
「あ、実行役員決まったんだ」
「安藤さんにできるのかな」
「決められないんじゃん?安藤さんだもん」
ひそひそと聞こえてくる声に、いますぐ自分の鼓膜をぶち抜きたくなる。
わ、わたしだって不本意なんです……!!
心の叫びはだれにも届かない。
ことの始まりは数時間まえ、お昼やすみでの出来事だった。